食材宅配サービスのことなら

食宅コラム 食宅コラム

無農薬野菜の作り方で大事な4つのこと【土壌・肥料・時期・作付】


食の安全に関心を持ち、無農薬野菜・有機野菜を購入しようとすると、慣行栽培の野菜よりも割高です。
「それなら自分で」と、家庭菜園を始める方が多くいらっしゃいます。

しかし、いざ始めると病害虫に悩まされたり、大きく育たなかったりと、さまざまな壁に直面するようです。
農作物は大自然を相手に農家が経験と知識を積み重ねて導き出したいわば「職人の技」の賜物。

無農薬で作る場合は、さらに手間暇が必要です。

※ここでご紹介する「無農薬野菜」は、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下で栽培された農産物である「特別栽培農産物」に内包される、「無農薬・有機肥料で育てた野菜」として表現します。

無農薬野菜を育てるなら土壌を知っておくこと

野菜が育つには適した土(土壌)が必要です。
無農薬で作りたいならなおさら、土壌作りが重要になってきます。

種蒔きや苗を植えるより前に、野菜作りは「土作り」から始まりますが、場合によっては「土壌改良」が必要です。

・野菜作りに適した「壌土」とpH(酸度)
野菜が根をしっかりと張れる、栽培に適した土は、細かい土粒のなかに3割ほどの粘土が混ざり、適度に柔らかさのある土で「壌土」と呼ばれます。
水分や養分の吸収しやすさ、通気性にもすぐれています。

また、土のpH(ペーハー)を測定することも必要です。
pHは7が中性、7より大きければアルカリ性、小さければ酸性です。

野菜作りに適したpHは6.0~6.5程度の酸性。
土壌酸度計を使ってpHを測定し、酸性が強い場合には「有機石灰」などを加えます。

一方アルカリ性に寄っていた場合には「硫安」「塩化カリ」などを使いますが、アルカリ土壌というのは日本には自然の状態ではほとんど存在しないので、原因の究明も必要です。

・野菜作りの前に必要な土作り「団粒構造」とは
適度なpH・土壌の耕作地を準備できたとしても土づくりはまだこれからです。
土には「細菌」「カビ」などの無数の微生物が生息しています。

微生物は土の中の有機物を分解して植物が吸収しやすい状態にするために欠かせません。
土壌の微生物を増やすために大切なことは2つあります。

ひとつは完熟堆肥や腐葉土を土に加えること、もうひとつはその後土をよく耕すことです。
この作業は野菜作りの最低2週間前までに終えて、水分量などを整え、さらに耕しておくことをおすすめします。

できた土壌は小さな粒々が集まった「団粒構造」になります。
団粒土は微生物が豊富で保水性・通気性に優れています。

・連作・輪作で土が痩せる「連作障害」
同じ作物を2シーズン続けて育てると、翌年は極端に育ちが悪くなることがありますが、これを連絡障害といいます。

タマネギ、サツマイモなど連作障害が出にくい野菜もありますが、多くの野菜は連作障害を起こすので注意が必要です。
トマト・じゃがいも・ピーマン・なすなどは同じナス科で、ナス科の作物を続けて植えるのも連作となるので注意しましょう。

同じ科の野菜が連続しないよう、耕作場所を毎年ローテーションすることを「輪作」といいます。
一度作った場所で再びその野菜を作ってはいけない年限は野菜によって違います。

輪作なら土が痩せないかというとそういうわけではありません。
無農薬で育てたいなら、できれば、連作も輪作もせず、ときには一部の土は休耕地として休ませて、土壌作りに専念したいところです。

・土づくりは年に数回。不十分だと無農薬で育てることは難しい
収穫後の畑は土中微生物のバランスがくずれているので、畑の根や葉くずを取り除き、耕すなど、手入れが必要です。
土の状態が悪くなると、次の栽培で病気や生育障害が出やすくなるので、無農薬で育てることは難しくなります。

土づくりは年に数回必要で、その時々の土の状態をよく知り、足りないものを補ったり、殺菌したりと対処していきます。
土づくりこそ無農薬野菜作りの決め手と言っていいでしょう。

無農薬野菜作りに使える有機肥料の種類と使い方

無農薬野菜を作る場合、有機肥料を使うのが一般的です。

どんな有機肥料をどの位使えばいいのでしょうか。

・無農薬野菜に使用できる肥料とは
「無農薬で野菜を作りたい」といった場合、肥料には特に決まりはないため、化学肥料を使ったとしても農薬を使わなければ、無農薬野菜ということになります。

(※)しかし、化学肥料を使うと病害虫被害が出やすくなり、そうなると農薬を使わざるを得なくなります。
したがって、農薬を使わないためには、肥料も無肥料栽培、もしくは有機肥料を使う事となります。

※栽培した野菜を販売する場合は「無農薬野菜」の表記はNGです。
JASの規定のもと、適切な表記に変更する必要があります。
詳しくは「 無農薬野菜 定義 」をご覧ください。

・有機肥料の種類は植物性「堆肥」と動物性「厩肥」がある
化学肥料(化成肥料ともいいます)は窒素・リン酸・カリなどを工業的に合成したものです。

これに対して有機肥料とは自然な素材から作られた肥料で、植物由来の「堆肥」と動物由来の「厩肥」に大別されますが、両方混合させたものを堆肥と呼んでいることもあります。
堆肥・厩肥は自然素材からできているという点では化学肥料よりも安心感がありますが、注意点として以下の2つがあります。

1.完全に発酵している完熟堆肥か
堆肥は発酵の進み具合によって「完熟」「中熟」「未熟」に分類されます。
家庭菜園では完熟堆肥で土づくりをすることが一般的です。

中熟堆肥、未熟堆肥は作付までの土づくりの期間を長くとる場合に利用します。

2.原材料が安心な素材かどうか
堆肥の原材料となる「米ぬか」「籾殻」などに、万一残留農薬や放射能が残留している可能性もあります。
「牛糞」「鶏糞」などについては、家畜の飼料に使用されている抗生物質などが堆肥に残ってしまうことも考えられます。

原材料までさかのぼって確認することが大切です。

・有機肥料でも使い過ぎは禁物
「有機肥料なら安全」と思われがちですが、有機肥料でも化学肥料でも、肥料の主成分は窒素・リン酸・カリです。
これらは植物の生育に欠かせない物質ですが、多すぎると窒素成分によって野菜の味が苦くなったり、土壌の栄養バランスが壊れて微生物が減ってしまったりします。

さらに、余分な栄養分が病害虫を増やしてしまいます。
有機肥料であっても使い過ぎは禁物です。

・「自然栽培」「無肥料無農薬栽培」とは
有機肥料でも与えすぎると病害虫を増やしてしまい、無農薬で育てることができません。
無農薬で野菜を育てる場合、「肥料はあげすぎるよりは少なめに」ということは心がけてください。

また、より安心な栽培方法として無肥料無農薬栽培を選択する人もいます。
「自然栽培」とも呼ばれ、無肥料無農薬を実践している生産者もいますが、この方法は家庭菜園には不向きです。

無肥料とする分、機械を導入したり、さらに人による手間暇をかけたりする必要があるためです。
肥料についての詳細は「 有機栽培 肥料 」のページ で解説しています。

家庭菜園で難しいのは時期の見極め。「種まき」「追肥」などのタイミング

その年の気候によっても変わってくるので、野菜作りの1年目、2年目には失敗することも多いもの。
できるだけ外さないよう、基本を知っておきましょう。

・種の蒔き時を外すと発芽しないことも
初心者はもちろん、野菜作りに少し慣れてきた人でも、「種を蒔いたのに芽が出なかった」ということがしばしばあります。

野菜は自然の恵みそのもので、その年の気候、蒔いたときの土の状態によって出来不出来が全く違ってきます。
種蒔きの基本は、タイミングを外さないことと、水やりを十分にして、かつ水はけにも注意することです。

特に、冬に向かっていく秋蒔きの種は慎重に時期を選ぶ必要があります。

・追肥の最適なタイミングとは
種蒔きの前の土作りで使う肥料を元肥(もとごえ)といい、栽培しながら土に肥料を追加していくことを追肥といいます。
無農薬栽培の場合、できるだけ元肥だけで育てるようにして、生育が悪いときのみ追肥をします。

追肥には通常即効性のある化学肥料を使いますが、有機肥料を使いたい場合、粉末のぼかし肥料(米ぬかや油粕を発酵させたもの)が比較的使いやすいでしょう。

追肥のしすぎは土も損なってしまうのでくれぐれも注意してください。

・収穫前の水のやりすぎで食味が落ちる
果菜類などは収穫の時期が近づいてきたら追肥と水やりを控えめにしないと食味が落ちることがあります。
果菜類は何日か好天に恵まれて日光をしっかり受けた直後に収穫できると、一番美味しい状態です。

家庭菜園では一気に収穫期を迎えた野菜が食べ切れず、畑で育ちすぎてしまうこともよくあります。
最適な時期に収穫して、冷凍保存したり人に差し上げたりして使い切りましょう。

無農薬野菜作りでは作付け計画と手間暇が大切

・無農薬で作るために作付け計画が重要な理由
作付け計画とは、いつ、どの場所にどんな野菜を植えるかという1年間の計画です。
作付け計画のポイントはいくつかあります。

1.連作を避ける
トマト、なす、ピーマンなどのナス科の野菜は一度作った場所での栽培は5年は避けるべきとされ、これを輪作年限といいます。
輪作年限は野菜によって1年、3年など違いがあります。

また、先に作る野菜を「前作」、次に作る野菜を「後作」といいますが、前作と後作には相性があります。
相性のよい順番で作ることで病害虫を避け、育ちがよくなります。

2.土を休ませる期間をつくる
収穫と次の種蒔きの間では土づくりができるよう、2か月~3か月ほど間を空けます。

3.畑の日当たり、水はけなどを考慮する
全体に日が当たるよう、背の高い作物の作付け位置には注意しましょう。
水はけのいい場所と湿った場所にもそれぞれ適した野菜を作付けします。

4.忌避植物、コンパニオンプランツを組み合わせる
忌避植物とは虫が嫌うハーブ類、害虫の天敵を増やすひまわり、コスモスなどの草花類などで、これらを植えておくと虫害をおさえることができます。

さらに特定の野菜やハーブを隣同士で栽培すると病虫害が減ったり生育がよくなったりする組み合わせを「コンパニオンプランツ」といいます。
これらを踏まえて作付け計画を立てることで、農薬を使わず、追肥も抑えた野菜作りが可能になります。

野菜の収量や食味にも影響するので、よく考えて計画しましょう。

・防虫ネット、雑草対策のマルチシート
無農薬野菜作りでは防虫対策には防虫ネットをかけます。
また、虫を見つけたときには手で駆除します。

雑草対策では草取りをするほか、保温・保湿効果もある黒いビニール製の「マルチシート」を使うこともあります。
化学的な農薬を使わない代わりに、さまざまな工夫で虫や雑草を駆除する必要があります。

・自然が相手だから失敗が付き物。試行錯誤で経験を積む
家庭菜園でもプロの農家でも、天候不順に左右されることは同じです。
1年目に非常にうまくできた野菜が2年目は原因不明の不作となることもよくあります。

そんな失敗も経験しながら、2年、3年と経験を重ねていくことで、野菜作りがうまくいくようになります。
自然相手の苦労があるからこそ、収穫の喜びもひとしおです。