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有機野菜(有機栽培)の肥料って何?肥料の種類と栽培方法


家庭菜園で野菜作りをしている方の多くは食の安全に関心が高く、「せっかく自分で育てているから、できるだけ体にいい有機・無農薬で」という方が大半です。

そのときに気になるのが肥料の選び方、使い方。

無機肥料と有機肥料の違い、特徴や種類、適切な使用法などをまとめてご紹介します。

有機栽培となる肥料の三大栄養素(窒素・リン酸・カリ)と、種類(完熟堆肥・堆肥・厩肥など)

有機栽培では有機肥料を使いますが、有機肥料にもいろいろな種類があります。
主に植物の三大栄養素は「窒素(N)」「リン酸(P)」「カリ(K)」です。

これらは植物の生育に欠かせない成分のため、肥料に含まれています。
化学肥料はこれらを工業的に合成して作りますが、有機肥料でもこの三要素が主成分であることは同じです。

有機肥料は原材料として自然素材を使うため、この他の微量成分も含まれています。

・有機栽培の基本は落ち葉・野草などの有機物を発酵させた完熟堆肥
有機栽培とは化学肥料と農薬を使用しない農法(詳しくは「01.無農薬野菜 定義」のページ をご覧ください)のことです。
有機栽培では有機肥料を使用しますが、その基本は「堆肥」です。

堆肥は落ち葉・野草などの有機物を発酵させたもので、完全に発酵が進んだものを「完熟堆肥」と呼びます。
完熟堆肥のほか、発酵が途中の「中熟堆肥」「未熟堆肥」というものもあり、使用法が違います。

通常は完熟堆肥を使用します。
堆肥はホームセンターなどで購入することができますが、有機栽培をする人は自分で作ることも多いです。

堆肥は別表のように、植物由来のほか動物の糞を原料とするものもあり、植物性のものと区別して「厩肥(きゅうひ)」と呼ぶこともあります。
有機栽培を実践する人は植物と動物の複数の素材を混ぜて堆肥を作ることも多く、その場合は堆肥と総称します。

・土づくりの段階「元肥」と即効性の「追肥」で使い分け。ボカシ肥料と堆肥の違い
ボカシ肥料とは、米ぬか、油カス、生ごみなどを発酵させたもので、有機肥料の一種です。
堆肥も広い意味では有機肥料ですが、土づくりの段階で「元肥(もとごえ)」として使うことが多いのに対して、ボカシ肥料は即効性があり、特定の野菜の育ちに効果を発揮するため、追肥にも使用しやすいという特徴があります。

・有機栽培で使用が許可されている化学肥料とは
農林水産省の有機JASマーク認定では、有機農産物という表示ができる栽培方法の基準が厳密に規定されています。
そのなかで通常は化学肥料に分類されるもの、例えば塩化加里・硫酸加里などは使用が認められています。

ただし「製造工程において化学的に合成された物質が添加されていないもの」などの注意点があります。
使用可能な肥料については農水省が公開している手順書で確認できます。

【肥料の作り方・使い方】家庭菜園に便利なボカシ肥料は窒素が主成分。使うときは即効性に注意

ボカシ肥料は作物の育ちが悪いなと思ったときに追肥として手軽に使用できますが、使い過ぎないよう注意が必要です。

ボカシ肥料の効果的な使用法についてご紹介します。

・ボカシ肥料の追肥のタイミングと量
ボカシは自然の原材料から作られるため、手作りのボカシも市販の場合でも、有効成分の量や即効性などが少しずつ違い、適量がわかりにくいため、常に控えめに施肥することが重要です。

ボカシ肥料は窒素分が多いため、あげすぎて窒素過多になるとアブラムシなどが発生しやすくなったり、野菜の中に有害な硝酸態窒素を蓄積してしまう原因になります。

生育状況に問題がなければ追肥せず、必要な場合も少量ずつ蒔いて効果を確かめましょう。
ボカシ肥料は即効性がありながら持続性もあるため、複数回の追肥は慎重に行います。

・米ぬかを使ったボカシ肥料の作り方
簡単なボカシ肥料の作り方を紹介します。

これは空気を遮断して嫌気性発酵をさせる方法です。

1 米ぬか、油カス、魚粉、牡蠣殻、などの主原料を用意する
2 市販されている発酵菌、土を水で溶いたもの、残しておいたボカシ肥料など、発酵を促進するための材料を用意する
3 材料の10%程度の水を加えて混ぜ合わせる(水分量が多いと
4 容器に入れて密封する
5 夏なら1か月、秋冬は2~3か月で完成

・化学肥料より有機肥料のほうが窒素過多になりやすい!?窒素量を計算しよう
化学肥料の場合、含まれる窒素の量がはっきりしていますが、有機肥料ではわかりにくいため、ついつい肥料を使い過ぎてしまいます。
ボカシ肥料をあげすぎると土壌を窒素過多にしてしまうので要注意です。

農林水産省の資料 によると、なたね油かすは窒素4.5%以上、米ぬか油かすは窒素2%以上などとなっています。
有機肥料の窒素分はすべてが分解されず、一部が土壌に残存するため、次の土づくりではそれを考慮する必要があります。

使った肥料の量と内容を記録しておき、窒素過多にならないよう調整していきます。

・可能なら元肥のみで栽培を
肥料を使いすぎた土壌は窒素過多になり微生物の量も減少してしまいます。
土壌のバランスを壊さないよう、追肥はできるだけ少なめに、追肥を一切なしで栽培できれば理想的です。

そのためには作付け前の土づくりと元肥が重要です。
追肥に頼らなくてもいいように、堆肥を使った基本の土づくりを念入りに行いましょう。

【肥料の使い方 実例】家庭菜園で、有機栽培のトマトを育てる

初心者でも有機栽培しやすく、プランターでも作れる野菜として人気のトマト。

トマトの有機栽培の事例をご紹介します。

1.土づくりは専用培養土を使うと簡単
トマトはリン酸を好む野菜です。
トマトを育てるのに最適な専用の培養土が1000円~2000円程度で市販されているため、こちらを購入するとお手軽です。

元肥もすでに施されています。
ベランダのプランターでも有機栽培することができます。

専用培養土を購入するときは、有機栽培用かどうか、原材料をよく確認します。
自分で土づくりをする場合は、酸性が強すぎる場合は改良し、窒素成分の割合が多すぎないようにします。

2.日当たりと水はけが重要
トマトの実を甘くするのは日光です。
日当たりのよい場所で育てることがとても重要です。

南米原産の野菜であるため、水はけをよくして、生育中も水をあげすぎないようにします。

3.ボカシ肥料などを追肥、量は控えめに
専用培養土で作るときは、追肥はほとんど必要ないため、生育状況を見て慎重に与えましょう。
必要な場合は、米ぬかや油カスで作られたボカシ肥料、リン酸成分の多い魚粉肥料などを二ヶ月間以上あけて、追肥します。

花が咲いたころから実がしっかりとつくまでの間は、追肥しません。

4.実がついてきたら水を控え、慎重に追肥
水分量が多いとトマトの実が甘くなりません。
実がついてきたら水やりを少なめに調整します。

最初の緑色の実が育ってきたころに追肥をすると実の育ちがよくなります。

放射能の汚染地域で作られた有機肥料がある?

「有機肥料なら安心」のはずですが、有機肥料の原材料となる植物が放射能汚染されていたり、牛糞に飼料として与えられた化学物質が残存している可能性が指摘されています。

本当の安全・安心のためには何が必要なのかについてご紹介します。

・放射能汚染された有機物を使用した肥料が話題に
東日本大震災後の後、「堆肥が使えない」と問題になりました。
森林の落ち葉や籾殻、藁などで作っていた堆肥が、東日本の多くの地域で放射能被害を受けてしまったからです。

2011年には農林水産省より、放射性セシウムが含まれる可能性のある堆肥などの施用・生産・流通の自粛について の情報が提示されました。
その後状況は改善されましたが、今も土壌のどこかに放射能が残存している可能性は常に考えておかなくてはなりません。

・肥料も自作でないと本当に安全・安心といえない現代
放射能への懸念だけではありません。
少し前には、BSE問題で牛骨粉が肥料として流通しなくなりました。

また、牛糞・鶏糞などの場合、家畜の飼料に添加物や抗生物質が使われていて、それが残存している可能性もあります。
籾殻や藁にも農薬が残っているかもしれません。

肥料も原材料から自分で集めて作らないと本当に安全・安心とは言いきれないという現状があります。

・土の放射能を測ることの大切さ
現在も放射能被害は収束していません。
自分の家庭菜園を持っているなら、漠然と不安を感じているよりは、放射能測定をしてみましょう。

全国ほとんどの自治体で放射能測定機器を貸し出ししています。
不検出であればその後は安心して栽培できます。

万一検出された場合には、しかるべき土壌対策をとります。

有機肥料と化学肥料は何が違う?野菜のおいしさや栄養は?

・有機肥料で育てたほうが「おいしい」「栄養がある」と一概にはいえない
「有機肥料で育てた野菜」と「化学肥料で育てた野菜」では、「有機肥料で育てた野菜」の方が美味しく、栄養価も高いというイメージを持っている人も多いですが、それは一概にはいえません。

化学肥料を使っておいしい野菜を育てている野菜作りのプロもたくさんいらっしゃいます。
そして、当然のことですが、家庭菜園で野菜を作る場合、化学肥料を使うよりも有機肥料だけで育てるほうが難しくなります。

自然条件に左右されやすく、土づくり、虫や雑草の駆除など多くの手間暇もかかるからです。
「おいしい有機野菜」が作れるようになるまでには経験も必要です。

・安心・安全の点では有機肥料のほうが上
有機肥料と化学肥料で明らかに違うのは安心・安全の面です。
化学肥料は窒素・リン酸・カリという化学物質を合成して作る化学物質ですが、野菜に吸収される時点で有機物質に変わっているため、普通の人が食べても害はありません。

しかし、妊娠中の方、食物アレルギーのある方や幼児など、とくにデリケートな体質の方は、化学肥料を使った野菜は食べられない・食べたくないということがあります。

化学肥料を使用している土壌で育てた野菜は、有害な硝酸態窒素を蓄積しやすいともいわれています。
また、野菜に吸収されずに土壌に残った化学肥料は自然環境によくない影響をもたらします。

・有機栽培でも環境を壊す可能性がある
もうひとつ知っておきたいことは、有機肥料でも与えすぎると自然環境を壊すということです。

化学肥料ほど直接的で深刻な影響はありませんが、家庭菜園などで知らず知らずのうちに有機肥料を入れすぎて土壌のバランスをそこなってしまうこともあります。

本来、土の力だけで育つのが、野菜の自然なあり方です。
持続可能な環境のためにも肥料の使い方には十分注意しましょう。

・安心・安全で、おいしい野菜を食べましょう
本当に安心・安全だと納得でき、しかもおいしい野菜を作ることはとても大変です。
しかし、苦労しながら日々を努力している全国の生産者さん、農家さんがたくさんいらっしゃいます。